思考停止状態をぬけて。

海外にいる多くの日本人が地震以来思考停止状態なのではないかと思う。先月もいろいろなことがあったが、なかなか日記を書く気にもなれなかったし。昔の仲間たちが東北で支援をしているのを聞いたりすると、何にもしていないでよいのだろうか、と思ったりして。

そんな中で、自分自身にとって、よいニュースがいくつかあった。まずは、Duke大学からThe Ruth and A. Morris Williams Faculty Research Prizeの受賞決定。そして、Human Frontier Science Programからも国際共同研究グラント(金沢大のTAさんと)の獲得が決定した。

論文の審査など、どうもやる気がおきず、たまってしまっているけれど、息をすって、できることをやるしかないね。

論文がOn lineに。

私たちの論文がOn lineに出版された(リンク)。今回は、Dukeのプレスリリースがあったせいか、あちこちのメディアで取り上げられた。たとえば、こちらでは、画像つきのやつで、"Major clue in long-term making. You may remember the color of your loved one's eyes for years. But how?"という見出し。みたいなかんじ。さすがにこういう文章は、慣れている人が上手だね。

論文の内容は、シナプスの長期増強というシナプスでの記憶の過程において、1つのシナプスの内部における、RhoとCdc42という信号分子の活性を測定した、というもの。これまで、シナプスにおいて、たった0.1秒しか続かないカルシウム上昇がどのようにして長期に持続するシナプスの記憶を作るのかは謎であった。今回の論文では、カルシウム上昇によってこれらの信号分子が活性化され、その活性が長く持続することによって、シナプスが記憶を保持することを助けていることを示した。これで、シナプス内部での分子の化学過程がシナプスの記憶を作りえることを、いちおうは証明したといえる。。。かな?

大地震!

昨日の朝、ノースカロライナではなんともない普通の朝だったけれど、Twitterを見て日本の大地震を知る。CNNでもニュース番組は日本の自身一色。そして、明らかになった被災地域の大きさと、津波の画像の恐怖に唖然。遠くにいてみているだけのことに歯がゆさを感じる。Dukeや昔のCSHLの同僚から、家族は大丈夫か、などというメールが次々と届き、心遣いに感謝する。

空前の震災と津波の規模で、被害を最小限にとどめた日本の防災技術と行動の規律はテレビでもとても評価されていた。日本以外ではとてもできないだろう、と。しかし、余震の続く中に避難地での生活は想像を絶するつらさであろう。こんなことをブログで書いてもしかたがないが、一人でも多く助かるよう祈るしかない。

こちらのニュース番組は、日本の地震の関係がほとんどをしめている。また、合間にはこの地震が世界の経済に与える影響などの分析もされていた。リビア内戦のニュースなどは、忘れされれてしまったかのようだ。震災の唖然とするような規模のせいもあるだろうが、それと同時に、日本の危機はアメリカにも非常に大きな影響を与えるものなので、多くの人々の関心事なのだ、ということを認識させられる。

なお、今日(3月12日)は日本語補習校卒業式(幼稚園から高校まで)だったが、その中で高校生たちが被災地への募金を呼びかけていた。ボランティアのみで成り立っているこの学校の高校生たちは、自分たちの学校のリーダーとしての役割をよく心得ている。その気持ちだけでも、すばらしいと思う。

 コミュニティを広げる。

2光子蛍光寿命顕微鏡を使ったスパインのイメージング、これだけうちのラボから論文を出しているし、この技術について、かなりの数の講義をあちらこちらでしているのに、なかなか使うラボが増えない。別にものすごく難しいというほどの技術でもない。競争相手がいないのは、非常に楽なことであり、時間をあまり気にせずにデータを全部きっちりとってから出せるので、いい論文になりやすい。そういう意味では、私のラボを立ち上げる大きな武器になったわけだが、最近、分野を大きくすることも考えたほうがよいもしれない、と思い始めた。そのほうが全体としては進みは速くなるし、自分たちがすべてをできるわけではないからだ。

ということで最近は、多少の努力をすることにしてみた。たとえば、顕微鏡を動かすためのソフトウェかアを頼まれたら提供する(といっても、コメントもほとんどはいっていないコードなので、役に立つかわからないが)。質問にも、できるだけ丁寧な答えを提供する。Woods holeの神経科学コースで顕微鏡を組み立てるところを見せる。Woodsholeには、夏の間、ず〜っと顕微鏡をおいてあるので、その間共同研究を積極的にする。などなど。最近、共同研究者の一人には、顕微鏡のセットアップを手伝ったが、これはさすがにもう2度とやりたくないくらい疲れた。

まあ、実際のところ、多大な時間を使うわけにはいかないし、当然自分の研究が優先だけれども、こういうこともきっと大事なんだと思う。

いろいろあった一週間。

先週の後半はフロリダのマックスプランクで講演。その後いろいろあった一週間だなあ。まだ終わっていないけど。

まずは、1週間のうちに2報論文がアクセプト。両方とも総説論文だけど、これはさすがにめったにない。しかも、そのうちの一報は論文提出から2日でアクセプトという超速(Current Opinion in Neurobiology)。

今週仕上げた仕事も沢山。。。論文提出1つ(上のやつ)、論文審査2つ、グラント提出1つ、グラントのプログレスレポート2つ、学会用アブストラクト提出。さすがにこれだけいろいろある週はめずらしい。R01のRenewalを延期してよかった。あと、ついでにティラノの伴奏の本番。

そして、そんななかで、コミッティミーティングを1つさぼってしまった私。。。いかんなあ。

それにしても、今年はすでに論文が4報アクセプト(共著論文もあわせてだが)。。もう1つ共著論文が、おそらくすぐにアクセプトになりそうな雰囲気。ということで、なかなかよいペースな気がする。

[2/25 追記]上の共著論文は、やはりPNASにアクセプトされた模様。ということで、1週間のうちに3報がアクセプトという、まずめったになさそうな事態となった。

そして、すでにアクセプトされていたNatureのプルーフがやってきたので、今週の「いろいろあった感」がさらに増強した。

猫はどうやって回転するのか?

SJLとMPのお別れパーティーで話題になった、猫がどうやって落ちるときに下向きになれるのか、という話題。物理的に不可能?ぐーぐるさんに聞いたところ、猫の回転のゲージ理論という論文があることをW発見。論文中のこの漫画に大笑い。。。いや、ちょっと無理がありすぎ、というか。。。内容はよくわからんが。。。

二人目のPhD!

優秀な人ほど早く去っていくものである。うちらのラボの、いってみればスター的存在だったかもしれないSJLが今日、無事にPhDとなった。大学院に入って3.5年目でのPhDはおそらく近年ではDukeでも最速であろう。

彼には、Creativity, Hard working, Enthusiasm, Intelligence, Luckとすべてがそろっていた、と思う。そうでなければ、こうはトントンと物事は進まない。それとともに、安田ラボの立ち上げには最も貢献した人の1人でもあろう。

大学生のときに、まだ始まったばかりだった、まだ小さいうちのラボに来て、やり始めたプロジェクトがすぐに動き始め、大学4年のときにはすでにNatureの論文となったほとんどのデータをとり、大学院に入ったら、あとはまとめるだけ。Prelim examの前にNatureのAriticleを出し、Prelimでは苦しんだものの、その後Review論文を一報1人でまとめて、無事にPhDとなった。博士論文もなかなかどうどうとしたものである。彼のような人間をたった3.5年で失うのはつらいが、ぜひとも次の目標に向けて全力でがんばってほしいと思う。

彼は、去年の暮れにPhDをとって、ちょっとだけラボでポスドクをしているPMとともに、まもなく二人新しい船出を迎える。もうラボが始まって5年。無事に巣立っていく大学院生たちがラボを出始めるのは本当にうれしいけれども、やっぱりちょっとさびしいな。