NIHのStudy sectionへの戦略

なんか、コメント欄のままにしておくのがもったいないので、こちらに移動します。。。NIHのStudy sectioにいってきたKenさんの感想記と、Satoさんのコメントです。NIHのグラントの審査の問題点がよくみえます。でも、逆に、どのような戦略をたてるかもみえてくるかもしれない。アプリケーションの質よりも、運に左右される!ということは、数を出せばいい、ということに他ならない、ってことかな?レビューワーも数年間はだいたい同じ顔ぶれだから、スタディセクションもよく考えなければいけないかもしれないけれども、スタディセクションの人って、分野の人だから知っている人ばっかり。。。

ノーベル賞に貢献したような研究でもとれなかったグラント。。。というのも、GFPが広くつかわれ認められる前は、アイディアとして新しすぎたのかもしれない。そして、彼がグラントをもらっていれば、ノーベル賞を受賞していたのは彼だったかもしれないわけで。。。結局、サイエンス「ゲーム」をうまく運ばなければ、画期的なアイディアがあればよいわけでないのかもしれない。。。論文が出始めればうまくいくようになるだろうが、えてしてそういうアイディアは論文になるまでになが〜い時間がかかったりして。。。

# Ken 『RFA(R01) の Study section、行って来ました。結論から言うと、グラントの審査の過程はやっぱりかなりのランダムプロセスなんだなぁ、という印象です。レビューワーは Applicationを丹念に読んでCritiquesを書きますが、結局 Study section では医者のカンファレンスみたいに「2,3分プレゼン」にまとめるんですね。んで数人のプレゼンの後で熱い議論がある訳ですが、丁々発止の最中に Applicationを繰って確認することは(時間の無駄なので)ほぼないので、レビューワーが理解&記憶している内容だけが勝負です。 Applicaitonを読んでない残りの人のスコアは、この議論にかなり左右されます。なので、第一〜第三レビューワーの中で、説得力のあるプレゼン&議論をする人の意見の影響力はかなり大きい。。。と言う訳で、ひょっとすると論文の採否より偶然に左右される要素は大きいかも、なんて思いながら帰って来ました。「この分野ならこの Study section!」という伝統と権威のある Section でないなら、馬が合わないと思ったら他の Study Section になるように書き直して出直すのも、確率を上げる一つの手かも知れません。。。Ryohei さんや他の方は、どう考えますか?』(2008/10/14 14:32)

ふーむ、これは、「数をだせ」といっているように聞こえます。でも、おそらくアイディアの質が高くなければ、レビューワーたちも熱く語ってくれないでしょう。本棚にある本が売れる確率、みたいな雰囲気なのかもしれません。よいアイディアをだしているうちに、レビューワーにも「ファン」ができて、熱く語ってくれるようになったりして。。

# Ken 『そうそう、Study section の朝の挨拶で、NIH の人がノーベル賞のこと言っていました。「受賞者で、Grant 獲得に非常に苦労した人、獲得を諦めた人を多く知っています。今年はショックな話もありました。今年の受賞者達に先立ち非常に大きな貢献をした人が、 NIH のグラントを取れずに苦労して、今はレンタカーシャトルバスの運転手をしています。こういう人を作らないように心して審査しましょう」 ・・・心がぎゅっと引き締まりましたよ。』(2008/10/14 14:36)

これは重い話ですよね。NIHのシステムがうまくまわっていない例というか。結局は成功した人の話だけが聞こえてくるわけでしょうが、アイディアがありながら散っていった研究者も沢山いそうです。

# Sato 『アメリカでPhD、ポスドクのあと、PIになってすでに18年が過ぎようとしてます。NIHのStudy Sectionにもかれこれ12−13年毎年出入りしています。わたしの一番最初のRO1はNatureに出た仕事(correspondence authorで)をもとに次のステップをプロポーズして出しましたが、あっさりunscoredでした。内容はほとんどかえず少し書き直して別の StudySectionに出したら0.5%というめちゃいいスコアーで帰ってきました。それ以来、同様の経験が結構あります。どの、Study Sectionがうまが合うかというのは、宝くじを当てるようなものですが、上記のようにうまくいくことがあります。わたしの、Study Sectionでの経験からだと、グラントが通る通らないは、サイエンスの質とはまったく別なものなのであまり気にせず自分のほんとにやりたい研究をやりたいようにやって、ほんとにやりたいことをグラントでプロポーズするというのがいいと思います。それでグラントが取れなければStudy Sectionの連中がアホだったということにして、質の高い論文をだして見返してやればいいと思います。反論として、”でもお金がないと研究できない” ということが現実問題としてありますが、もし大学、DepartmentのChairがほんとうにあなたのScientistとしての素質、将来性をすごく買っているとすれば、なにかと面倒をみて助けてくれるはずですし、そういう所に職を求めるべきだと思います。自分のScienceがグラントに dictateされるのではなく、Scienceがグラント(つまり研究費)をdictateできるような方向を自分なりに考え出すことが将来後悔しないと思います。』

なんか、ゲームの達人、という風格がただよってきますね。いつもながら、前向きで力の出るご意見です。「やりたい研究をやるべし」というのは、きっとそうなのでしょう。自分がやっていることは、みんなも面白いと感じてくれるのが大前提ですが。。。もっとも、私の場合、アプリケーションとやっている研究は、いつもかなり違っていたりして。。。この辺の戦略もいろいろわかれそうです。

「サイエンスがグラントをDictateする」。こうありたいですね。論文が出てくれば、こういうことも可能になってくる気がします。