学会発表の基本とか

今、上海の近くにあるSuzhouというところにある、コールドスプリングハーバー、アジアという学会にきている。本家のロングアイランドの学会と違って、ホテルも学会室も豪華でなかなかよろしい。

さてさて、Vikingさんのところに英語発表の基本について書かれていたので、それにInspireされて、少し学会発表について書いてみようか。Dukeで大学院生たちに「学会発表のしかた」を議論するクラスを受け持っているわけだし(教えているとはさすがにいえないが)。

まず、学会発表のさいに、絶対に忘れていはいけないんだけど、おもわず忘れてしまうのは、

「相手は私の研究の内容に関して、素人である」
「相手は私の研究に興味を持っているわけではない」

という事実。発表のさいに、当然、自分の研究について一番自分が知っているし、自分が一番面白いと思っている。ということで、イントロでは「なんでその研究が重要なの?」ということをきちんと説明する必要があるし、グラフなどは、きちんと読み方を教えてくれないと相手はついてこれない。データの解釈も、自明であるような気がしても、ばか丁寧なくらいに説明する。業界用語や略期は避けるのは当然。しかし、それと同時に、やや矛盾するようだが、

「相手を侮ってはいけない」

というのもあってロジックの飛躍や説明のうそはには注意しなければならない。相手は、私の研究に関してはよく知らないかもしないが、サイエンスのプロでもある。

さてさて、実践的なスライドの作り方として、Dukeのクラスで使っているのは、このスライド。一通り読むだけでとてもよくなるとは思うが、いくつかポイントを。

1. Start broad, get specific, and end broad.  (下の絵のように)
イントロでは、聴衆のほとんどの人が理解できる一般的な話、たとえば分野の大きな目標のようなもの、から初める。そして、順次話しをSpecificにしていき、自分の研究の話題にもっていく。こうすることで、「なんでそんな研究やってるの?」という話が明確になる。そして、最後も同様、自分のやった研究からもういちど大きな話に戻すとよい最後にもう一度一般的な話しにもってくると、聴衆は「この結果はなんで大事だったんだっけ?」というのを思い出すことができる。10分のショートトークでも、サマリーのあとに一言でもBig pictureをみせると、かっこいいかもしれない。

2. トークをいくつかのエピソードにわける。
相手は、長い話をフォローするのは無理。ということで、短いエピソードをつなげ合わせることによって、相手のアテンションが維持できるようにする。特に30分以上のトークでは大事。

3. ホームスライドを使ってエピソードをつなげる。
Home slideとは、それ一枚でトークのすべてを網羅するようなスライドで、エピソードの間に同じスライドに戻ってくるようにして話の流れを明確にするために使う。Home slideの大切さは、クラスでもよく議論するが、実際に上手なものを作るのはなかなか難しい。それに、これは上手なトークをするための唯一の方法ではない。効果的なHome slideを作ると、トークの流れがとてもよくなる。たまに、目次をHome slideに使う人もいるが、これはあまり意味がない。お勧めは、中心となる仮説か結論を絵で表したスライド。

基本的には、イントロダクションの後にHome slideが来て、ここで「今日は、この仮説を証明するための、こういう実験の結果を報告します。」。。みたいなかんじで全体の流れを説明する。このときにすでに結論までの道筋を相手が見えるようにしておくと、相手がついてくる確率が高くなる。たいていの場合は複数の実験結果があるだろうから、それぞれの実験がその仮説の中で何を証明していたのか、次にどの部分の証明が必要なのかを、そのたびにHome slideを使って説明する。結論でもHome slideを使い、「これらの実験で、この仮説のこの部分が証明できました。」というかんじ。「将来はこの辺をつめる必要がある。」という感じのことをいってもいいかもしれない。

発表の途中に大事なのは、
1.Eye contact -- 聴衆のほうを向く。会場の後ろまで声が届いているか確認しながら。
2.レーザーポインター -- 複数のパネルがあるような図をさけ、できるだけ使わなくてもよいようなスライドを作るのが基本だけど、必要なときは使う。必要ないときには消しておく。震える人は、両手でもつようにするとよい。眠っている人がいたらこれを武器にして戦う(うそ)。
3.しゃべりかた −− 相手に伝わるよう、ゆっくりと。スライドの切れ目では、ちょっとポーズをいれると同時に、何かつなぎの言葉をいれる。大事なところは、一瞬間をおいて強めに話すなど、少しトーンを変える。

さて、私の今回のトークは。。。まあまあだったかなあ。25分のトークで最後に時間の計算を2−3分間違えて、スキップしたスライドがあるのが悔やまれる。こういうことをやるのはプロフェッショナルではないよね。


Susan McConnell, From "Giving an effective presentation: Using Powerpoint and structuring a scientific talk".