ぶっちゃけた話だが。
日本のどこかの飲み会で、酔っ払ったときに、「自分はCNS(Cell,Nature,Scienceの科学雑誌御三家)にのるような研究がしたいし、そういうテーマを選びたい。」と言ったことがある気がする。これは、かなりぶっちゃけた意見というふうに取られたかもしれない。
サイエンスをゲーム的に考えれば、今のサイエンス業界、特に生物系では、出世も、グラントも、過去に出した雑誌の「格」でかなりの部分が決まる、という状態であるからして、科学雑誌の中でも最高峰であるこれらの雑誌を目指すのは当然のことだろう。雑誌の「格」というのも、実際、トムソンロイターという会社がまとめる「インパクトファクター」という数字で決定されるわけで、いろいろとこの指標について問題が指摘されてはいるものの、しばらくは、これがサイエンスを動かすことになる。それが、ゲームのルールならば、それに「勝つ」ことを目指す、というわけか。
否。実際のところ、それが本当の目標でもないだろう。はじめてNatureを出した論文の発見は、F1-ATPaseの回転であったが、これは、「まさか無理だろう」という実験を、ためしにやってみたら、本当に分子の回転が見えてしまったものだ。初めて実験が成功した瞬間の感動は15年ちかくたった今でも忘れられないし、それに匹敵するような感動はいまだにやってきていない。当時学生だったら、本当に世界で始めて分子の回転をみた人間になることができたけど、PIになった今、おそらくあんなことは一生ないのかもしれないなあ〜とは思う。結局、サイエンスをやっててよかった、という瞬間って、「この発見は世の中を変える」と感じた瞬間だよな〜。結果的には、そういうのがCNSにのるって、ことか。
しかし、だんだん私もすれてきて、というか自分が実験していないからしょうがないんだけど、「この発見はCNSにのる」っていう大人びた(?)興奮のしかたをするようになったのは確か。そして次に思うのは、「これでR01のRenewalは楽勝か」。「次のHHMIのCompetitionは、いけそうだな」とか。。。。う〜ん、大人になるってつまらないことだな。