サイエンスは経済とともに動く。

経済が収縮すれば、サイエンス業界も影響は免れない。そして重要なことは、業界の「幸せ度」は、絶対的な金額ではなくて、金額の傾きに比例するということ。アメリカでも一時期サイエンスへの予算が倍になったことがあり、それにともなってサイエンティストもど〜んと増えた。でもその予算を維持できずに、減らす方向になると、(新しい)職はなくなるしグラントもとれなくなる。絶対的な金額では昔よりもはるかに多くの予算がつけられているにもかかわらず、不幸な人の割合が増える。予算を永遠に増やし続けることが出来ない以上、こういう時期は必ずやってくる。アメリカや日本なら、それは今、ということになる。経済が不調なときに、今の研究者人口を維持しなければならない明確な根拠は無いと思う。とばっちりは若手のほうにきやすいのが問題なのだが。幸いなことに、NIHは問題に気がついていて、K99やR01の新規グラントシステムなど、若手にもチャンスがくるようにしている。(そうなると、今度はPIから5−10年あたりが難しくなるという問題もあるが)。

経済が不調なときに、研究者個人にできることは、業績をだして、常に上位にいることを目指す、ということくらいであろう。グラントも、Top5%がきられることは当分ないだろうし。Fund raisingをするのは大事なことではあるが、実際のところ、グラントを取ってくる以上のことはできない。多額の寄付をとってくるような話は研究所単位の仕事だし、そういうことができる研究所を目指す、というのが研究者の選択ということになる。NIHの予算を増やすのは、NIHの仕事かな?研究所だって、多くの業績を出してくれる研究者がいたほうが、Fund raisingしやすいにきまっている。

世界の研究情勢で、もう1つ重要なファクターがアジア。最近の中国やシンガポールのように、経済が好調で重点的にサイエンスに予算をあげているところに、アメリカで業績をあげた研究者たちが流れている。Duke神経学科からも、オーガスティンが韓国に、パーバスはシンガポールに移った。まさに、サイエンスは、経済とともに動く、いうわけ。