ロンドン旅行2

ロンドン3日目。完全に観光のみの一日。朝は、ぼんやりとバッキンガム宮殿にいったら、ちょうど衛兵交代であった。ものすごい人ごみであった。古い伝統を守っているところと、その伝統を観光資源にしたあたり、面白いなーと思った。その後はウェストミンチェスターの巨大時計塔(国会議事堂?)をみたのちに、ナショナルギャラリーへ。有名なモネなどの印象派のコレクションは、なかなかのものであったけど、人ごみもあって、ちょっと疲れてしまいのんびりモードですごした。

夜は、いよいよこの旅行のハイライトと決めていたバロックのコンサートにいく。バロックの演奏会ではめずらしく、怒涛の大興奮するような演奏で、とても楽しんだ。

曲目は、ヘンデルのソロモン。ドイツの古楽器オーケストラAkademie fur Alte Musik Berlinと、English Voicesという合唱団、それから数人のソリストのジョイントコンサート。5月のルフトハンザフェスティバルというバロックのお祭りの一環のようである。

会場は、外観は立派なものの、中身はコンサートホールとして設計されたようにはみえない。床は体育館みたいな平らな板張りで、折りたたみいすがぎっしりとならんでいる。かなり窮屈である。しかし、オーケストラのほうは豪華!全部で30人近くになり管楽器もそろう。とくに通奏低音は、チェロ3、コントラバス2、チェンバロ、テオルボ、オルガン、ファゴットという充実振り。分厚い低音が刺激的な音楽をつくる。古楽器団体としては、もしかしたら珍しいかもしれないのは、棒をもった指揮者。代理指揮者ではあったが、よいテンポを保ち、それぞれの楽器に自由な表現をさせながら、見事に全体の調和を作ったよい演奏であった。オーケストラのほうも、すばらしい技術と、流れるような表現が冴えた。合唱団がまたすばらしい。フーガのような入り組んだ場面でも音程がよく、自由自在に音楽を表現している。

ソリストは、みなすばらしかったが、好きだったのは、カウンターテナーのTim MeadとソプラノのMojca Erdmann。Timはソロモン役で、微妙に弱弱しい感じがするものの、美しくまとめていた。Solomonはあまり人間らしくないほうがよいような気がする。Mojcaのほうは、容姿の美しさもさることながら、はっきりとした発音と繊細な表現がよい。一人、妙に迫力のある表現をする人がいると思ったら、なんと医者出身だった(James Gichrist)。彼(女)らが歌い終えると、拍手したい衝動をこらえるのにかなりの努力がいる。バロックのコンサートでは、ソリストがすばらしいアリアを歌っても拍手はない。でも、観客が興奮してきているのは、そのあとの静けさでわかる。最初みんなが集中していないときは、曲の合間にごそごそと音が聞こえるのだが、曲がすすみ、興奮が高まるにつれて、曲の合間は余韻を楽しむ時間となり、物音1つしない緊張は逆に興奮を高めていく。次々と怒涛のようにすばらしいレシタティーボ、アリア、合唱が続き、会場の興奮はますます高まる。そして最後に全員の合唱が終わるとそれが爆発し、この規模の演奏会では聞いたことがないような大拍手!

いやー、ひさしぶりに楽しい演奏会だったなー。昔パーセルカルテットが日本に来たときに、似たような感動を味わったのを思い出した。次は、ぜひひいこと行きたいな。やはり、親しい人と感動をシェアできないというのは、さびしいものだ。