うーん、すごい。

今週のネーチャーに、ナノメーターレベルの構造を可視化できる顕微鏡がのっている。技術そのものは、すでに数年前からあるが、実際の細胞イメージングに応用されたのは初めてであろう。この責任著者のHellさんは、ある意味、とても物理やさんというか光学やさんで、いままで生物に興味をもっているとは思えなかったんだけど、突然バイオロジカルな問題にアタックしはじめたのが、ちょっとおどろき。ちょっと興奮してしまったので、書き留めておこう。

蛍光顕微鏡は、細胞イメージングでは素晴らしい威力を発揮する。電子顕微鏡などと違って、生きた細胞を観察できるし、選択的に特定の分子を見ることができる。しかし、分解能がどうしてもマイクロメーター程度なのが問題。

ナノメーター領域が見えるこの技術のミソは、色素をレーザーと同様の原理で強制的に光子の誘導放出を起こさせる、STEDというテクニック。この誘導は、好きな波長でできるし好きなタイミングでできるから、STEDの分はまったく観察しないことが可能。まずはレーザースポットで普通に色素を励起して、次にドーナツ型の光でその周りの部分でSTEDをおこさせて、消してしまい、真ん中だけを観察するわけ。これによって小さい点だけからの像を見ることができる。

さらには、STEDをある程度強いひかりでおこさせてやると、STEDの飽和がおきる。そうすると、真ん中の小さい点をのぞいて、ほとんど消光してしまうような条件ができる。ということで、原理的には無限大の分解能を得ることが可能となる。

もちろん、脳のスライスなどには応用できないだろうが(ちょっとでも光が散乱するとドーナツの真ん中の部分に光がはいる)、今後培養細胞の観察では、結構はやるかもしれない。