コンピューターはバイオロジーを記述できるか?

私の目標に近い話がネーチャーの記事にのっていた。2020年コンピューティングと称して、今後20年でコンピューターサイエンスでどんなことができるようになるかを議論しているわけだ。ここでは主にたんぱく質によるシグナリングカスケードの話をしている。図1のノイマン型コンピューターとの違いはおもしろい。シグナリングは、どうやら機能ごとにモジュールができているわけではなさそうで、結局物事をシンプルに分解できないというわけだ。わたしには、20年後でも、今とあまり変わっていないだろうという気がする。パラメーターが多すぎる。<妄想>
しかし、そうはいってもシグナリングのユニットのようなものはそれなりに発見されつつある。私が遊んでいるRas-MEK-ERKシグナリングなんて、本当にいろいろ細胞反応にでてくる。こういうのは、コンピューターでいうとAND gateみたいな素子にあたるのかもしれない。そこらじゅうにつかわれているが、別の機能モジュールでは、違う目的で使われるわけだ。ということで、「この」AND gateはいつ働いているんだろう、という具合に、個々のユニットをみていく必要があるんだろう。もしそうなら、たんぱく質ごとにものを見ていくのでは、やはりシグナリングはわからないんだろうなあ。Ras-MEK-ERKをノックアウトするのは、AND gateを全部壊してみよう、ということにあたる。そら動かなくなるだろうけど。。。もちろん、何が多く使われるユニットなのか、ということがノックアウトでわかってくるわけなのだが。今うちらがやろうとしているのは、空間配置ごとにシグナリングをみていこうということだ。うまくいけば多少ましな感じがするが、もっとよいソートのしかたはないものだろうか。

と妄想している間に、今後20年で何をしようか、というアイディアが遠くのほうにうっすら見えてきたかな。なるべく大きな視野を維持したい。

しかし現実は、6月にはHINのグラントに申し込まなければいけないわけで、今日は論文読みに精をだし、今後の実験計画を練る。また、学部生用のよいプロジェクトを思いついたので、早速ディスカッションする。それから夏休みには、ハワードヒューズの夏季研究プログラムで、もう1人学部生がくる。そのための小さいプロジェクトも考えなければ。あまりプレッシャーがない彼らには、なるべく大胆な仮説を検証させるのがよいという気がする。