日曜恒例の音楽うんちく

ひさしぶりにモダンバイオリン(普通のバイオリンのことね)による、バッハの無伴奏ソナタを聞いた。シリングの演奏で、それなりに評判がいいらしいのだが、バロックバイオリンでのバッハを聞きなれた私には、はっきりって、”うるさい”という感想。ビブラートがかかった均一な音で、朗々と弾くバッハは、バロックとは異質な感じがする。

バロックの音楽は、語るような旋律と、和音が命。バロックバイオリンで細かいアーテキュレーションを使うことにより、”語り”、4本の弦が違う音色をだすことによって、多声的な感覚ができる。なるべく1本の弦を使って弓のアップダウンも均一にひくモダンバイオリンとは異なる世界なのである。また、ビブラートは和音の色を消してしまうので、多く使うとバロックは退屈な音楽になってしまう。最近では、モダンバイオリンでもバロックぽく弾く人が多くなってるようだが。ピアノとチェンバロの差にくらべれば、昔と現在のバイオリンの差は非常に小さいのだが、そのぶんかえって違いが気になる。逆にピアノのバロックに対しては私は許容範囲が広い。

そういえば、ストラディバリなどの16−17世紀のバイオリンは、もちろん、もともとはバロックバイオリンとして作られている。それで、裏板をそらせて、棒を中に入れて強い張力にも耐えられるようにするなど、現在の演奏ができるように改造されている。なんかかわいそうな気がするけども、これで、現代音楽用に作られたどんなバイオリンよりも素晴らしい音が出るというのだから、本当に不思議、というよりは偉大。

注:ここで私がいっている、モダンとか現代は、ロマン派以降のこと。